ライオン株式会社
本社所在地:〒130-8644 東京都墨田区本所1-3-7
創業:1891年(明治24年)10月30日
事業内容:ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品、クッキング用品、薬品、海外現地会社への輸出
適用ソリューション:OpenFrame
「今日を愛する。」という企業スローガンに基づき、生活者1人ひとりの価値ある未来に向けた「今日」に貢献する企業を目指すライオン株式会社(以下、ライオン)。同社は、2008年よりホストマイグレーション構想の策定に取りかかり、2010年から2年8カ月をかけて基幹業務システムのホストマイグレーションを実現した。
1980年、ライオン歯磨とライオン油脂の合併により誕生したライオン。合併時にメインフレームで稼働していた両社の基幹業務システムも統合している。システム統合以降も、業務や経営環境の変化に伴い、基幹業務システムの機能追加や変更を実施。システム統合から約30年、ほぼ当時の構成のままで基幹業務システムを運用し続けてきた。
しかし30年間という長期にメインフレームで稼働する基幹業務システムを運用してきたことにより、システムの老朽化や複雑化、技術者の高齢化や退職による運用保守の継続性、メインフレームに維持運用コストがかかりすぎるために新規案件への投資を増額できないなどの課題を抱えていた。
1990年代のシステム構成は、メインフレーム上でほとんどのサブシステムが稼働しており、一部のサブシステムはオフコンやUnixサーバーで管理されているシンプルな構成だった。
統合システム部主任部員である雨宮一男氏は、「1990年代以降、徐々にオープン化を推進してきましたが、メインフレームを残したまま、さまざまなオープン系システムが構築されたために、システム間の連携が複雑になってきました。こうした背景から、システムの再整備の検討を開始しました」と当時を振り返る。
また、もの作りを事業の根本とするライオンでは、流通各社からの注文に対し、製品を安定供給することを重要視しており、メインフレームで稼働する販売物流システムの老朽化も解決すべき課題の1つ。そこで、販売物流システムをはじめとするサブシステムを再構築し、インタフェースを統合するシステム構成を検討した。
販売物流システムの刷新は、2007年より検討を開始。雨宮氏は、「ERPシステムの導入も検討したのですが、投資効果が見込めないため、マイグレーションと再構築に方向転換することを決意しました」と話している。
システム再整備の目的は、大きく3つ。業務ニーズに応じたデータの提供や分析環境の整備により「業務の高度化を支援」すること、社内外の変化に柔軟に対応できるシステムへの転換により「変化対応力を強化」すること、安定的かつ効率的なサービスを低コストで提供できるシステム基盤の整備により「システムの効率化」を実現することである。
また、システム再整備の方針としては、メインフレームで稼働するシステムを仮想サーバーに移行し、既存の資産の20%を再構築、80%をマイグレーションすることを決定。ハードウェアは、メインフレームをx86系サーバーに、OSはz/OSをLinuxに移行。データベースに関しては、Oracle Exadataを採用している。
既存資産のマイグレーションでは、Tmax OpenFrameを採用し、データ資産(SAM/VSAM)、オンライン環境(CICS)、バッチ環境(JES)を移行した。雨宮氏は、「いくつかのマイグレーションツールを比較検討したのですが、当社のオンライン環境とバッチ環境にTmax OpenFrameが最も適合していました」と話す。
マイグレーションは、3つのフェーズで実施。まずフェーズ1では、2010年前半で移行計画と設計を行い、2010年後半よりマイグレーションを開始して、2011年9月に本番稼働した。またフェーズ2およびフェーズ3では、2011年よりマイグレーションを開始し、2012年8月に本番稼働している。
マイグレーション後のシステム構成は、バッチサーバーは2台の仮想サーバーで、オンラインサーバー、ファイルサーバーは各1台ずつの仮想サーバーで稼働している。各仮想サーバーは、SAMファイルやプログラム、JCLなどが格納された共有ストレージ、およびVSAMファイルが格納されたTibero RDBMSにアクセスすることで処理を実行している。
Tmax OpenFrameを導入した効果を雨宮氏は、「Tmax OpenFrameで提供される開発・運用向けツールであるOpenStudioを活用することで、既存のメインフレーム技術者が、ハードウェアやOSがメインフレームからLinuxに移行したことを意識することなく、開発や運用ができる環境を実現できました」と話している。
システム再整備の効果として、統合データベースとBIツール、システム連携基盤の構築により「業務の高度化支援」を実現。既存の技術者を生かせる開発・運用ツールの整備により「変化対応力の強化」ができた。また、開発と運用の分離や仮想サーバーの採用、オープンソースの活用などのシステム基盤の整備により「システムの効率化」を実現した。
雨宮氏は、「マイグレーションでプログラミング言語がCOBOLに統一され、保守性、生産性が向上しています。また、データのオープン化と統合データベースにより、データ活用が容易になりました。さらに、老朽化、複雑化が著しいシステムの再構築で、技術の継承を実現できました。これによりTCO(総保有コスト)を削減できました」と話す。
また、当初はマイグレーション後のパフォーマンスを懸念していたが、CPU消費型の処理ではかなりの性能向上を実現。I/O消費型のバッチ処理は、メインフレームより時間がかかる処理もあるが、全体では20%~30%の性能向上を実現している。
そのほか、メインフレームを運用していたときには、コスト的にもメインフレームを2つの拠点に設置して、ディザスタリカバリ(DR)を構成することはできなかった。しかしオープン系システムにマイグレーションしたことで、DR構成も検討できるようになり、事業継続計画(BCP)の選択肢が拡大した。
雨宮氏は、「今後は、マイグレーションしたサブシステムのリライトや再構築を推進していきます。また、個別に連携されている周辺システムの共通インタフェースへの集約を進める計画です。さらに、個別にデータベースを持っているサブシステムのOracle Exadataへの統合や、BIツールの活用によるUIの高度化を推進する予定です」と話している。
ライオン株式会社
統合システム部
主任部員
雨宮一男
Tmax OpenFrameは、メインフレームシステムのアプリケーション、プロセス、及びデータを抽出して柔軟なオープン環境へのマイグレーションを実現する「メインフレーム・リホスト・ソリューション」です。ビジネスロジックやアプリケーションロジックの変更なしで、メインフレームのプラットフォームからUNIXプラットフォームへのシステム全体のマイグレーションを可能にします。
Tmax OpenFrameは、企業様のビジネス環境の変化に迅速かつ柔軟に対応できるシステム構築を可能にします。
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