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国産メインフレームから Azure 上の「OpenFrame」へ契約管理システムをリホスト: 高い可用性を維持しながら運用コストを 1/3 に削減。

日本で 27 年以上にわたり生命保険を提供し続け、顧客や第三者機関から高い評価を受けている FWD生命保険株式会社。同社の契約管理システムは創業時の 1996 年から国産メインフレームが使われてきましたが、これをリホストする検討を 2018 年末からスタートし、2023 年 3 月に移行を完了しています。このインフラ基盤として採用されたのが、FWDグループの共通基盤として選ばれているクラウドである Microsoft Azure、そしてメインフレームで稼働するアプリケーション資産とデータをクラウド環境にすばやく移行し、メインフレームのミドルウェア データベースと同等の安定性・可用性を Azure 上で提供する、日本ティーマックスソフト株式会社の「OpenFrame」です。このリホストによって、運用コストを 1/3 にまで削減することに成功し、十分な可用性も実現。今後はアプリケーション群のマイクロサービス化や、Agile/DevOps の本格導入も検討されています。

高コストで複雑な国産メインフレームから低リスクで移行するためリホストを選択

FWD生命保険株式会社 (以下、FWD生命)は 27 年以上にわたって日本で生命保険を提供し続けており、現在の保有契約件数は 186 万件を超えています。また 2023 年 1 月 4 日に発表されたオリコン顧客満足度®調査において、収入保障型生命保険商品ランキングで『FWD収入保障』が 3 年連続 1位に選ばれました。世界最大のサポート サービス業界のメンバーシップ団体 HDI の日本における拠点である HDI-Japan による、HDI 格付けベンチマークの「クオリティ格付け (センター評価:電話) 」でも、2023 年度に最高ランクの『三つ星』を獲得しており、顧客や第三者機関から高く評価されています。

同社の IT システムで注目したいのが、ビジネスを支える重要基盤である「契約管理システム」を、長年にわたって使い続けてきた国産メインフレームから、クラウドへリホストしていることです。リホストとは業務アプリケーションには変更を加えずに、それらを動かすための OS やハードウェアを変更する手法です。

「国産メインフレームは 1996 年の創業当時から使ってきましたが、2017 年頃には、そろそろ新しいインフラにすべきと考えていました」と語るのは、FWD生命で CTOオフィス Head of IT Developments& Planning を務める岩品 知明 氏。既にこの当時から、メインフレームが抱える問題を強く意識していたと振り返ります。

「以前の契約管理システムはハードウェアの設置や管理、日常的なオペレーションまで、このメインフレームを提供するベンダーにアウトソースしていました。そのためコストが高く、システムそのものの複雑化も進んでいました。またこのころからメインフレーム ベンダーのサポートが縮小し始めていたことも、他のインフラへの移行の必要性を感じさせる要因になっていました」。

そこで 2017 年 5 月には新たな IT 戦略の一環として、新規商品用の契約管理システムの新規構築を開始。これが完成した 2018 年 9 月には、国産メインフレーム上で動く「旧契約管理システム」は、旧商品の管理のためだけに使われるようになりました。つまり国産メインフレームで動く契約管理システムは、いわば「塩漬け」に近い状態になっていったのです。このようなシステム構成の変化も、高コストで複雑な国産メインフレームからの脱却を強く後押しする要因となりました。

その後、旧契約管理システムのインフラ移行の検討を本格化。当初は2018 年 9 月に完成した新契約管理システムに統合することも考えられましたが、契約管理システム間の仕様の違いを網羅的に対応するのは難易度が高く、移行対象となる IT 資産が膨大であるためリスクが大きい、という問題もあったと言います。

「旧契約管理システムから移行すべき IT 資産は、プログラム数で 19,000以上、データベースが 237、関連システムも 45 に上っていました。これらを低リスク、かつ、スピード感を持って国産メインフレームから脱却させるには、『リホスト』が最適だと判断。また FWDグループは基本的にクラウド ファーストであるため、移行先をクラウドにすることは自然な選択でもありました」。


FWD生命保険株式会社
CTOオフィス
Head of IT Developments & Planning
岩品 知明 氏



日本ティーマックスソフト株式会社
製品&ソリューション責任者
羅 鍾弼(ラ・ジョンピル)氏


TmaxSoft のリホスト ソリューション「OpenFrame」の採用 ~限られた移行スケジュールや業界特有のニーズに対応しながら、クリティカル システムを国産メインフレームから移行~

このような検討と並行して、リホストを行うためのプラットフォーム製品の選定も実施。複数のリホスト ソリューションを比較検討した結果、日本ティーマックスソフト株式会社 (以下、TmaxSoft) が提供する「OpenFrame」の採用を決定します。その理由について岩品 氏は次のように説明します。

「IBM 系メインフレームからリホストできるソリューションは他にもありましたが、国産メインフレームからの移行の実績があったのは OpenFrame だけでした。またメインフレームで保持する多様な機能を網羅的に移行し運用ができることも選択にあたっての大きな理由となります」。

OpenFrame を稼働させる基盤としては、Azure を採用。その理由はFWDグループが全世界の共通プラットフォームとして Azure を採用していたことと、パフォーマンスや信頼性、高いコスト効率などを評価できたことからだと説明します。

「当社は、これまでにメインフレームから Azure への多数の移行プロジェクトを成功させてきました。2020 年には、Microsoft の Chief Architect Team と共同で Azure 上での OpenFrame でバッチおよびオンラインのワークロードを処理する実証実験を行いました。Azure 上の OpenFrameは、System z インフラストラクチャより優れたパフォーマンスとスケーラビリティを発揮しました。これによりお客様の要望に自信を持ってお応えできる技術力を築き上げてきました」と TmaxSoft 製品&ソリューション責任者の羅 鍾弼 (ラ・ジョンピル) 氏は語ります。

2018 年 12 月に実機検証 (POC) をスタートし、まずは移行対象となるメインフレーム資産の棚卸しを行うとともに、OpenFrame 上での一部機能の稼働を検証しました。移行対象アプリケーションの中から、OpenFrameの機能を網羅的に確認できる処理を選択し、それらを実際に OpenFrame上で動かしながら、問題がないことを確認していったのです。

「この POC には私も関わらせていただきましたが、データ登録、照会、アップデートがすべて問題なく動くことをチェックしました」と羅 氏。旧契約管理システムではネットワーク型 DB が使用されており、それをOpenFrame によって RDBMS に変換していますが、この変換プロセスでは OpenFrame が特別なインターフェイスを提供しているため、COBOLのアプリケーションを修正する必要はありませんでした。また、データがRDBMS へと移行されたため、Oracle DB との連携を TmaxSoft が提供する Change Data Capture (CDC) ソリューションを介して行っていると説明します。「保険業界では扱う個々のデータは、レコード サイズが大きく、既存データ型を再定義してデータを別の業務で使用されることも多いのですが、このような業界特有のニーズにも対応しました」。

2019 年 4 月には POC を完了し、その翌月から本格的なプロジェクトに着手。前述した膨大なアプリケーション群などを移行できる環境を、約 2 年かけて構築していきました。2021 年 7 月からそのテストを実施し、2022年 12 月から移行を開始。2023 年 3 月までに移行を完了し、本番稼働をスタートさせています。

次の取り組みとして「マイクロサービス化」を検討

プロジェクト期間は約 4 年。長期のプロジェクトとなりましたが、これを推進するにあたっては、当初から 3 つのことに配慮したと岩品 氏は語ります。それは、正式採用前の POC を徹底的に行うことでソリューションの可能性を見極めておくこと、まずは「リホスト」でメインフレーム ベンダー依存から脱却するという無理のない手法を選ぶこと、そして 1 社だけでは成功が難しいため複数のパートナーと一体となってプロジェクトを進めていくことです。その結果、FWD生命は見事に国産メインフレームからの脱却に成功したのです。

これによって「システム運用コストは 1/3 にまで低減しました」と岩品 氏。気になるのはその可用性ですが、運用開始から現在までの半年間、業務ロジックに関わる障害は発生していないと言います。またインフラがクラウドであるため、処理量が増大した際にはすぐにリソースを増やせることも、運用上の安心材料だと指摘します。

クラウド化で運用を内製化できたことで、運用の透明性が高くなったことも評価されています。これによって、システムで何か問題が起きたときの対応も、以前より迅速になっていると言います。

これらに加えて羅 氏は「データは RDB 化されておりますので、Azure 上で提供されている各種機能と連携させることで、データ活用の可能性も広がっています。さらに、当社では COBOL から JAVA への移行ソリューションも提供しており、COBOL から脱却するお手伝いをすることもできます」と述べています。

“システムの重し” だった国産メインフレームがなくなったことで、新たな取り組みへのハードルも、一気に低くなりました。既に 2 つのチャレンジが視野に入っていると岩品 氏は語ります。

1 つはアプリケーションのマイクロサービス化です。既に一部システムでの導入が進んでおり、来季には本格的な構築が始まると言います。

もう 1 つは Agile/DevOps の導入によるシステム開発スピード、生産性の向上です。こちらも一部システムでの導入が進んでいますが、基幹システムの安定化・低コスト化に伴い、来期より本格的な展開を進める予定です。

「まずはお客様向けのフロント系システムから着手することになると思いますが、将来は契約管理関連機能のマイクロサービス化も視野に入っています」と岩品 氏。Azure と OpenFrame で国産メインフレームから脱却したことは、IT 戦略の次のステップへと踏み出すうえでも、重要な意味を持っていると言えそうです。

(写真左から)
FWD生命保険株式会社 メインフレームモダナイゼーション部 丸山 雄一郎 氏
FWD生命保険株式会社 IT業務管理部 石神 政一 氏
FWD生命保険株式会社 CTOオフィス 岩品 知明 氏
日本ティーマックスソフト株式会社 製品&ソリューション責任者 羅 鍾弼 氏
日本ティーマックスソフト株式会社 技術本部 金 素情 氏
日本ティーマックスソフト株式会社 技術本部 金 成一 氏


国産メインフレームから Azure と OpenFrame へとリホストした結果、システム運用コストは 1/3 にまで低減しました。既に半年間運用していますが、業務ロジックに関わる障害は発生していません

岩品 知明 氏: CTOオフィス Head of IT Developments & Planning
FWD生命保険株式会社

当社は、これまでにメインフレームから Azure への多数の移行プロジェクトを成功させてきました。Azure 上でのパフォーマンス テストも実施し、メインフレームの Azure 移行には自信を持って対応できます

羅 鍾弼 (ラ・ジョンピル) 氏: 製品&ソリューション責任者
日本ティーマックスソフト株式会社

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